「石神井まちづくり訴訟サポーターズ」は、石神井公園駅南口における再開発事業認可の差止めと地区計画変更などの取り消しを求める訴訟=「石神井まちづくり訴訟」をサポートするために発足した任意団体です。
原告団は、この訴訟によって地区計画変更に至る練馬区の不法性を明らかにし、再開発事業を差止め、あわせて都市計画道路232号線を止め、私たちが訴えてきた石神井の景観や秩序を守ることに繋げたいと考えています。これから、長く厳しい戦いとなることと思いますが、私たちは、石神井のまちづくりをこの訴訟に託す想いで原告団を支えていきます。
【控訴審】裁判レポートNO.1
「石神井まちづくり訴訟」の控訴審の口頭弁論が行われました
2024年12月13日金曜日、霞が関の東京高等裁判所第808号法廷で「石神井まちづくり訴訟」の控訴審の口頭弁論が行われました。
7月29日の猛暑のなかでの地裁の判決言い渡しとは打って変わって冬の訪れを感じさせる寒さのなか、20名を超えるサポーターズメンバー、支援者の方々が傍聴に詰めかけてくださいました。誠にありがとうございました。
以下に法廷の様子をお伝えします。
【口頭弁論期日の内容】 東京高等裁判所808号法廷にて
🔶14時開廷
裁判官入廷。
🔶裁判長より
控訴人、被控訴人東京都、被控訴人参加人(練馬区)、被控訴人参加人再開発組合から提出された書面の確認が行われた。提出書面は以下のとおり。
🔶裁判長より
本日をもって結審とする。
次回判決言い渡しは、2025年1月22日(水)14時とする。
原告、参加行政庁(練馬区)、東京都、再開発組合の提出書面は以下のURLからご覧いただけます。
https://shakujiimachisapo.wixsite.com/mysite/dai2ji-saibanreport11
*次回、判決言い渡しは、2025年1月22日(水)14時より808号法廷で行われます。
【弁護団からの解説】
裁判終了後、弁護士会館会議室に場所を移して、弁護団から以下のような報告、解説を聞きました。
🔶本日の裁判について
本日も大勢の方にお集まりいただきまして、本当にありがとうございました。
裁判は3分程度で終了し、これまで傍聴に来ていただいている方々にはかなり短く感じられたかもしれませんが、控訴審はむしろ、このくらいの時間で終わることの方が多いのです。一審の地方裁判所は比較的私たちの声に耳を傾けてくれ、議論するような場面もありましたが、高等裁判所では、双方主張しつくしているということで本日結審、来年1月22日午後2時、「判決言い渡し」ということになりました。
高裁において結審から1か月くらいで判決というのはかなり短いという印象です。これが何を意味するのか正直計りかねるところで、基本的には、結論を待つということになると思います。
では、私たちが「控訴理由書」でどういう主張をしたのかお話したいと思います。
すでにみなさんご承知の通り、先般、東京地裁の一審判決で、この訴訟に対して「棄却」という判断が出ました。「控訴理由書」はこの地裁の「原判決」の誤りを高等裁判所に伝え、その見直しを求めるというものです。
今回主張しているのは、「裁判所には法令適用の前提となる事実に関し、重要な点で誤認があるのではないか、審議不尽があるのではないか」ということです。
原判決に対していろいろ言いたいことはあるのですが、結論を見直してもらうためには、原判決の根本的な問題点を指摘し、そのうえで事実関係を見直してもらうというのが重要だろうと考えています。今回特に重視したのは、原判決が「変更前地区計画が第1種市街地再開発事業による建物および敷地の共同化の実現ならびにそのための高さ制限の変更を否定したとは言えない」ということをかなり重視し、結論を導いている点です。敷地が細分化されて小さい建物が乱立している状況を大きな建物にまとめるというのが「共同化」ですが、そもそも変更前地区計画が、市街地再開発事業を含めた形で高いものを建てるという共同化を実現するためには最高高さを高くしてもよいとしていたのかどうか、という点を私たちは問題視しています。原判決は、「変更前地区計画では共同化は否定していなかった」としています。共同化を模索したが断念したという事実はあったが、今後チャンスがあれば高さ制限を緩和して共同化することを否定してはいなかった、というのが地裁の見方です。
しかし、変更前地区計画はその直前に制定された「景観計画」を具体化するもので、「景観計画」では「石神井公園から見て徐々に眺望が高くなっていくようにし、突出したものは作らない」となっており、あえて、商業地域であっても原則35メートル、例外でも50メートルと言う規律を設けたわけです。だとすれば変更前地区計画は、仮に共同化するとしても、あくまで石神井公園からの眺望との調和を図るという観点から「原則35メートル、例外でも50メートルの範囲の高さしか認められない」という趣旨と読むべきではないかというのが私たちの主張です。
弁護団が「控訴理由書」を書く上で重要と考えたのは、「原判決が何を根拠に、共同化に伴う高さ制限の見直しを否定しなかったと言えるのか、その根拠がどこにあるのかをきちんと証拠をもって基礎づけられているのか」という点ですが、弁護団が見る限り、この点について原判決はきちんと事実を認定しておらず、また証拠をきちんと引用していないと考えられます。つまりその点に関して事実誤認、証拠採取の違法があったのではないかと思うところです。
もう少し詳しくお話しすると、原判決では「本件変更前地区計画の決定がなされた当時は、共同化や本件再開発の具体的な進展がなかったため建築物の最高高さにかかる制限は小規模な共同化を想定したものであったが、本件準備組合の作成した計画案のように、当初想定されていなかった大規模な共同化が行われる場合には、一律に最高限度を定めるよりも、高度利用地区の制度の下で市街地環境改善の程度に応じた個別の規制とする方が望ましいと考える」としています。これはほぼ練馬区の主張そのままなのですが、原判決は、その根拠として認定事実「(6)のカ」と「(6)のキ」の2つを上げています(→判決文22ページ)。
「(6)のカ」には、本件変更前地区計画が定められてから3年以上経過した平成27年8月から平成28年8月の間に6回に渡って行われた「石神井公園駅周辺地区まちづくり懇談会」に関する事項が載っています。しかしこの中に、「変更前地区計画は共同化を否定するものではなく、共同化が必要な場合は高さ制限を見直す」というような議論は一切書かれていません。また「(6)のキ」は、参加人区及び本件準備組合が平成29年から30年の間に、3回に渡って開催した「石神井公園南口西地区市街地再開発事業検討状況報告会」についての記述ですが、ここでも同様に、そのような発言は書かれていません。認定事実も引用されている証拠もないのです。こういった事実を私たちは強く主張しています。
私たちの主張に実質的に反論しているのは練馬区だけです。練馬区は、「変更前地区計画制定当時は、共同化するにしても1000㎡程度のものしか想定しておらず、現在のような3000㎡の大規模再開発は想定していなかった、想定外の出来事なのだから変更してもよい」と主張しています。原判決の認定している認定事実「(6)のカ」と「(6)のキ」の2つのここを読めばこう書いてあるということは一言も言っていません。東京都もこれを引用していて、それ以上のことは言っていません。
さらに原判決では、「変更前地区計画はその見直しは否定していなかった。地区計画の変更に当たって考慮要素として考えるべきなのは、今ある高さ制限が共同化に邪魔かどうかだけである」としています(→判決文33ページ4行目~19行目)。つまり、区は高さの最高限度が土地の高度利用や共同化の障害となるかどうかだけを考えればよく、障害となるのならばはずしてもよいと言っているわけで、これは大変おかしい論理です。地区計画というのはむしろ高さを制限して邪魔するためのもので、いっときのそれぞれのニーズで簡単に変えられないようにきちんと制限をかけるというのがその趣旨です。土地の高度利用や第1種市街地再開発事業を前提とした建物共同化などをする際の歯止めとして定めるものなのですから、障害になるのは当たり前なのです。【→控訴理由書5ページ(3)】
控訴審では、枝葉末節の議論よりも骨太の部分で戦うべきと思っていて、原判決の「変更前地区計画が共同化するための高さ制限を規定するものではなかった、共同化する為に高さ制限をはずしてもよい」というコアな部分について、「事実そのような認定はどこを見ても書いていないし、証拠を引用していない」という反論を行っています。
争点設定をシンプルにしているので判決までの期間が短い、ということであれば、前向きな評価になりますが、反対に、工事の進捗状況から結論としては「事情判決」、「棄却」であるから、深く検討する必要はないと判断したためなのか、判断しにくいところです。私たちとしては、控訴理由書の主張に対し、高裁がきちんと判断してくれることを願っています。
最後に、あらためてこれまでのみなさんのお力添えに心から感謝申し上げます。
判決がどの様なものになるか見通せませんが、判決後にはまたみなさんにご報告し、今後何ができるかも考えていきたいと思います。本日はありがとうございました。
以上
▶「第一審の判決文」は以下のURL、またはQRコードからご覧ください。
https://shakujiimachisapo.wixsite.com/mysite/dai2ji-saibanreport12