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【第2次】裁判レポートNO.12
第2次「石神井まちづくり訴訟」の判決言い渡しが行われました

2024年7月29日月曜日、霞が関の東京地方裁判所第103号法廷で第2次「石神井まちづくり訴訟」の「判決言い渡し」が行われました。
本来「判決言い渡し」は2024年5月16日に予定されていましたが、2024年3月13日に地裁が行った一部地権者に対する土地明け渡しの「執行停止」の決定を受けて石神井公園南口西地区市街地再開発組合(再開発組合)が本訴訟について弁論再開の申立をおこない、これを地裁が受け入れて弁論を再開、「第11回口頭弁論期日」に変更されました。これをもって結審となり、この日の判決言い渡しを迎えました。
猛暑のさなか、判決をしっかりと聞き届けようと、地裁で一番大きな103号法廷を埋め尽くすほど多くのサポーターズメンバー、支援者の方々が傍聴に詰めかけてくださいました。誠にありがとうございました。傍聴は抽選となる予定でしたが、ギリギリ抽選にはならず、全員が傍聴できました。
判決は私たちの訴えが全く認められず全面敗訴という、非常に残念で納得できないものでした。以下に判決言い渡しの様子をお伝えします。

【判決言い渡し】  東京地方裁判所103号法廷にて


🔶15時開廷

裁判官入廷。

🔶裁判長より

主文:原告の請求をいずれも棄却する。
   訴訟費用は原告らの負担とする。


・判決文、判決要旨は、以下のボタンから

【弁護団からの解説】

裁判終了後、場所を移して、弁護団から以下のような報告、解説を聞きました。


🔶本日の裁判について

本日は気温が40度を超えるとの予報もある中、これだけ大勢の方にお集まりいただきまして、本当にありがとうございました。皆様判決をお聞きになったかと思いますが、本当に大変残念な結果となりました。
請求の主旨は第1項から第3項までありましたが、第1項の原告適格の判断については想定内のことでした。問題は第2項の地権者であった方に対して、地区計画変更の違法性を認めるかというところでしたが、残念ながら、これを認めないという判断が下されたということになります。
判決を読んだ私の第一印象は、3月に「執行停止」を認めた裁判所の決定からは大きく後退する内容となった、ということです。執行停止の決定文の中で最も重要であったのは「地区計画の決定には、住民の合意形成を図るための努力を十分に尽くさなくてはならない」とした部分ですが、今回の判決にはこの考え方が全く踏襲されていません。
なぜこのように変わったのかというと、この3月に3人の裁判官のうち、左陪席と右陪席の2人の裁判官が交代となりました。この時点ですでに判決のベースとなる文章を書いていたはずと思われる2人が異動し、裁判長とこれまでの経緯を見ていない裁判官2名という形に裁判体の構成が変わった結果、考え方も大きく変わってしまったと思われます。さらにこのタイミングで、3月に地裁が出した執行停止決定が東京高裁によって取り消され、執行停止が却下されたことが、判決に大きく影響したのではないかとも推測されます。

今回の裁判でずっと議論してきた違法性についての論点は、変更前地区計画では原則35メートル、例外で50メートルという高さ制限があったのに、高さ100メートル超を可能にするような変更が認められるのかということです。これに対する裁判所の答えは「高さ制限は考慮要素ではない」というものでした。
裁判所は『変更前地区計画決定は、「第1種市街地再開発事業」において新しく共同化することまで否定する主旨ではないし、その場合に高さ制限が支障となるのであれば、それを変更してはいけないという主旨まで含んでいなかった。だから地区計画の変更をする場合においては、第1種市街地再開発事業においてそれまでの地区計画の高さ制限が支障になるかどうかだけを考慮すればよい』と、大雑把に言うとそう言っています。これまでずっと議論してきた高さ制限変更の違法性に関する議論については「考慮事項ではないから違法性の判断をする必要がない」とし、また1.5倍ルールについても判決内容に全く反映されていません。
執行停止で示された「地区計画には住民合意が必要で、合意形成がきちんと図られなければいけない」というそれまでの裁判体の考え方が、なぜここまで失われてしまったのか、私たちとしてはすごく残念で、あらためて問い直さなくてはいけないと思っています。

判決内容を少し詳しく説明しますと、本件で私たちは、高さ制限の緩和が違法だとし、地区計画変更の必要性を判断する過程で「練馬区は考慮すべきことを考慮していないので違法である」と主張してきました。
主張のポイントは以下の2点です。
①変更前地区計画で高さ制限を定めた経緯について考慮せずに、高さ制限を撤廃した
②石神井公園から駅へ向かっての景観を守るため、突出した建物を建てないように決めている練馬区の景観計画との整合性を考慮していない
①について裁判所は
高さ制限の緩和にあたり、考慮の強い必要性が求められるかという点に関して
・変更前地区計画が第1種市街地再開発事業による共同化を否定する趣旨までは含んでいなかった
・変更前地区計画は非常に長い住民参加の手続きを経て決定されたものであるのは認めるが、変更前地区計画ほどではないが、変更後地区計画の決定にも相応の手続きと議論がなされている
とし、練馬区が考慮すべきは、高さ制限が第1種市街地再開発事業の障害になっているかどうかだけで、練馬区が高さ制限を緩和する必要性があると認めれば、高さ制限を維持する方向の他の考慮要素については検討する必要がないと断言しています。さらに、地区計画を変更するにあたって必要とされる理由は重大なものでなくてもよく、なぜ原則35メートル、例外50メートルにしたか、また50メートルの範囲でできる再開発事業を考える必要性がなかったのかについては不問に付し、これらを考慮しなかったことは違法性の根拠にはならないとしています。
また②について
突出しているか否かは周囲との相対的関係において決まるものであり、今回の再開発ビルは既存の高層建築2棟の中間の高さであるから突出しているとは言えず、景観計画基準には反しない、さらに、平成27年12月に上位の都市計画である練馬区マスタープランの改定があり、その中で第1種市街地再開発事業を重点事業として進めることが盛り込まれたので、それ以前にできた景観計画の景観形成基準の解釈も変わったとしています。

先ほどから出ている「考慮要素」という言葉ですが、平成18年11月2日に小田急線複々線化をめぐる最高裁判決で、都市計画決定の違法性の判断に関して以下のように示しています。
「判断の過程において考慮すべき事項を考慮しない、あるいは考慮すべきでない事項を考慮したなどにより、その結果として内容が社会的通念に照らして著しく妥当性を欠くことを違法とする」
すなわち「考慮要素」に沿って裁判所は違法性の判断をするということで、今回、地区計画決定の議論に際して何を考慮すべきであったのかが、最高裁判断にあてはめをするうえで重要です。
これまでの裁判で私たちはずっと、旧地区計画を策定した経緯を考慮すべき「考慮要素」であるとしてきましたし、違法性に関する議論の6割くらいをこの点に費やしました。これに対して練馬区はずっときちんと答えず、裁判所も不信感をもってその点を何度も問うていたはずです。それを「考慮要素ではない」と言われてしまうとこれまでの約2年に渡る裁判は何だったのかと思わざるを得ません。
なぜこのように裁判所が変節してしまったのか、私たちから見れば裁判所が逃げたとの思いを禁じえません。執行停止決定を出した3月時点では、裁判所は我々の訴えを理解してくれていると感じていましたが、その後考えを変えたために、このような理解しがたい苦しい判決文となったのであろうと推測されます。

今回の裁判所の判断、マスタープランに書いてあれば地区住民の考えは無視して市街地再開発事業を進めてよいという考え方は、地域住民のまちづくりを根底から否定する、将来に大きな禍根を残すものと言わざるを得ません。
この判決をこのまま受け入れていいのか、今後については原告団と話し合って決めたいと思います。
本日は本当にありがとうございました。                                      

 

以上

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